CASE 03 · 78歳女性 · Q1/5
深夜の救急外来
外が今季いちばん冷え込んだ未明、救急隊から連絡が入った。「78歳女性、独居。朝から連絡が取れず、様子を見に来た娘さんが、布団の中でぐったりしているのを発見したそうです」。 ストレッチャーで運び込まれた患者は、呼びかけてもまぶたをわずかに動かすだけだ。顔はむくんでぼてっとして見え、しぼり出すような嗄れ声でうめく。手を触れるとひやりと冷たく、皮膚はかさついている。モニターの数字が静かに並ぶ——体温33.5℃、脈は48と遅く、血圧92/60、呼吸は8回と浅い。JCSはII-20。 派手な出血もショックバイタルの暴れもない。けれどこの『地味さ』の奥に、見逃せば命に関わる内分泌の危機が潜んでいる。冬、高齢女性、低体温、徐脈、むくみ、嗄声——点を線でつなぐのは、あなただ。